原油価格とか物価とか。

原油価格は高いのか?

「物価は需給バランスによって決まる」
中学生だか高校生だかの時にいわゆる”神の見えざる手”として習った覚えがある。

WTI原油先物市場での原油価格が高止まりして久しい。
実際、ガソリン価格は今、もんのすごく高くて、都内の交通量が目に見えて減少したり、海外旅行者数が減少したり、その影響は非常に広範囲に及んでいる。

原油価格上昇の理由としては、
・中国・インドなど、発展途上国の急速な工業化
・原油枯渇予想の不透明さ
・オイルサンドなど、高コスト原油の採掘
・絶対的な供給量不足
・投機マネーの大量流入
などが挙げられている。


しかし、原油価格を含む物価全体に言えるのは、最初に書いた需給バランスによって決定されるものである、ということ。

つまり、どんな理由があるにせよ、原油価格が現在の状態で停滞、もしくは小刻みに上下しているということは、それなりに正当な需給バランスの上に立っているからである、とは考えられないだろうか。

特に先進国において、原油なしでの生活は考えられない。
物流の中心はトラックだし、よほどの都市部でない限り、自動車は生活必需品である。多くの日常品は石油製品であり、電気を作るのにも石油は必要である。

これほどの需要がありながら比較的安価に原油を使う事ができてきたこと自体、不自然なのではないだろうか。

どんなに価格が高くても、本当に必要があれば手に入れるのが本来の需給バランスであるならば、現在の価格は適正であり、さらに価格が上昇してもそれが適正な市場価格なんじゃないかな、と思う。

高ければどうにかするもんだ

周知のように日本は過去、二度の石油危機を乗り越えてきた。
その結果、省エネ・高効率という意味では世界でもトップレベルの技術を持つに至っている。
今後、原油価格がさらに上昇するようなことがあれば、さらに技術革新は進められるだろうし、その技術は世界中を席巻する事になるはずだ。

例えば、太陽光発電の分野。つい最近まで、日本の太陽光パネルは世界市場の半分以上を占める、圧倒的な競争力を持っていた。最近はドイツ、中国勢にその勢いを奪われてしまっているが、シリコンの使用量が少ない薄膜型の太陽光発電など、技術面の競争力は世界トップレベルである。
これが世界中に広がったとすると、市場はほぼ無限大となり、さらに価格競争力は向上する。

三菱も世界最大級の風力発電技術を蓄積し、市場に製品を近いうちに出す事ができるという。

つまり、原油価格が上がれば上がるほど、日本の得意分野であるクリーンエネルギーや環境技術の市場が広がる。
これは大きなチャンスであると捉える必要があるのではないだろうか。

税金はどこに使いましょうか

日本の漁業関係者が燃料高騰の影響を訴えて一斉休漁したことは記憶に新しい。実際問題、漁業市場は強烈な買い手市場であり、抑圧された市場価格と高騰する燃料費との狭間で漁業関係者は青息吐息であるに違いない。

政府も燃料費上昇分の9割を援助する政策を発表したが、これが根本的な解決策にならないのは誰の目にも明らかであり、単なるバラマキとしか思えない。

本当に漁業を立て直したいのならば、現在の複雑な流通経路を抜本的に整理する必要があるのではないだろうか。

また、多くの中小企業が苦しみながら倒産していくのを横目に、農業や漁業だけが多くの優遇策に浴している現状は、将来的にいい結果をもたらすとは思えない。
日本は資本主義国家であるから中小企業が倒産してもいいという政府の姿勢から考えれば、効率が悪い上に市場価格が低く、利益の出せない農業や漁業は廃れるのが当然である。

需要があれば適正な市場価格で農産物が流通するような仕組みづくりをするのが本来の税金の用途なのではないだろうか。

つまり、漁業も農業も林業も畜産業も、一定の需要があれば必ず利益の出るビジネスモデルを形作ることができるのだから、政府は現状維持から一歩踏み出した政策を打つべきだ。

勝てば官軍

原油価格が高騰しようが一部産業が衰退しようが、環境技術を用いる多くの分野において市場占有率を高く保っている限り、日本は世界一の工業国であり続けることができるし、これから発展する国のために、地球環境のために一番努力をしたとの世界的評価を受け続けることができるだろう。
そのためには、今、この高い原油価格が本当に高すぎるのかをもう一度考える必要があるのではないだろうか。